【徹底解説】真夏でも運動パフォーマンスを向上させる”暑熱順化”とは?

【徹底解説】真夏でも運動パフォーマンスを向上させる暑熱順化とは? ミニベロ

夏の暑さでトレーニングを避けてばかり、また、最近空調の効いた室内でしかトレーニングをしていなかったり、そんな状況に陥っていませんか?

現代に生きる我々は、文明の利器”冷房”を使って、いつでも快適な室内でトレーニングできるようになりました。

しかし、結局ランニングや自転車競技など、室外競技の本番は、灼熱の外で行われます。

そこで重要になってくるのが「暑熱順化」です!

言葉は聞いたことがあるけど、意味はあまり。。。

(実は聞いたこともない)

という方もいらっしゃるかもしれません.

今回は、この記事で「暑熱順化」について意味のおさらいと、その効果、方法について解説していきたいと思います。

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「暑熱順化」(しょねつじゅんか)とは

「暑熱順化」(しょねつじゅんか)とは、シンプルに説明すると、漢字のとおり「暑さに身体を慣らすこと」( heat acclimation )という意味です。

スポーツ選手やアスリートは、あえて暑い環境でトレーニングや競技を行うことによって、暑さに対する適応性を身につけるよう、身体を順応させています。

いつもは平気だった距離が、暑い日だと苦しく感じたことがありませんか?

これは誰でもそうなる、当たり前のことと放置するのと、暑い状況でも安定したパフォーマンスが出るよう対策するのとでは、結果が全く違います。

灼熱の真夏に汗をうまくかけず、熱を身体の外に逃がし、体温を調節する準備がしっかりとできていない状態だと、過度な体温上昇を招いてしまい、長時間の運動はかなり苦しいです。

しかし、暑熱順化で対策することによって、暑い気候下でもパフォーマンスを維持することができ、また熱中症などのリスクを軽減する効果があるということですね。

こちらは日本気象協会でも熱中症対策として紹介されている方法です。

暑熱順化のメリット

では、暑熱順化のメリットもひとつひとつみていきましょう。

暑熱順化自体は、空調の効いた部屋でトレーニングするのに比べたら苦しいことかもしれませんが、このメリットを知れば必ずやっておかないといけないことだと認識が改まるはずです。

比較的低い体温でも汗をかきやすくなる

暑熱順化すると、暑さ慣れしていない状態よりも、低い体温で汗をかきやすくなります。

つまり、通常より汗の量が多くなるわけです。

そもそも、なぜ人間が暑いと汗をかくかというと、汗をかくことにより皮膚の表面から気化熱が奪われるため、体温の上昇を防ごうとして発汗しているんですね。

つまり、汗の量が増えるということは、そのぶん、体温を下げやすい身体づくりができているということなんです。

体温が下がりやすいということは、熱中症にもなりにくくなる。

実は、真夏に多いイメージの熱中症ですが、実際のピークは7月後半なんです。

こちらは総務省消防庁の時期別の熱中症患者の統計結果です。

(参照:https://www.fdma.go.jp/publication/hakusho/h30/topics10/38253.html)

こちらは、毎日の最高気温を折れ線グラフで表したもの。

(参照:https://onl.tw/QbaBU9q)

これをみると、最高気温を連日記録するようなお盆よりも、なんと7月中旬のほうが熱中症が多く、ピークは7月下旬ということがわかります。

なぜこのような気温とのギャップがあるかというと、ひとつ考えられるのは、暑くなり始めで「暑熱順化」できてないから、ということがあります。

スポーツのパフォーマンスだけでなく、熱中症という命のリスクまでかかわってくるなんて、暑熱順化は一般の方にも知ってほしい知識なんです。

皮膚血管が拡張する

環境省が発表している熱中症マニュアルにも暑熱順化についての記載があります。

そこには、暑熱順化すると、汗と同様に比較的低い体温で皮膚血管が拡張し、放熱しやすくなるとの記載があります。

暑熱順化すると、暑熱環境での体温上昇や心拍数増加などの生理的ストレスを軽減できます。また循環血液量が増加し、汗のかき始めも早くなります。

暑熱順化によって、汗の観点でも、血管膨張の観点でも、身体の熱を逃がすという機能が向上するんですね。

環境省『熱中症 環境保健マニュアル2022』https://www.wbgt.env.go.jp/pdf/manual/heatillness_manual_full.pdf

つまり「暑さになれる」=「身体の放熱が上手にできる」ということなんです。

また、このメリットは熱中症だけの話ではありません。

循環血漿量の増加は、筋肉への酸素・栄養の供給を劇的に増加させ、運動パフォーマンスを向上させます。

酸素不足による疲労の軽減で、運動持続性が高まり、栄養素の安定供給は、回復力や成長が促進されます。

暑熱順化は、熱中症対策だけでなく、暑い中での運動能力向上が可能になるんです。

暑熱効果のメリットは持続する

暑いなか、なんとか身体を慣れさせても、数日すれば戻っちゃうのでは?

と鋭い方は思うはず。

いいえ、実は暑熱順化のメリットはある程度持続することが可能です。

数週間、通常の環境でトレーニングを行い、プラスで少し受動的な温熱負荷を組み合わせることで、ある程度暑熱順化の効果を維持できると報告されています。

逆に、効果継続のために何もしなければ 、約 2 週間ほどで元に戻ってしまうといわれています。

なかなか余裕があるリミットのように思えますが、運動を習慣化していない方には効果を失うのが早く感じますかね?

でも、ご安心ください。

なんと、素晴らしいことに、暑い中でのトレーニングを再開すると、暑熱順化を獲得する前より早く、再順化されること、そしてさらに、最初に得られた効果より、より高い順化効果が獲得できることが報告されているのです!

これは頑張るかいがありますね。

もちろん楽なトレーニングではありませんが、暑い夏でも熱中症に負ず、パフォーマンスを落とさずに成績を残すためには、ほぼ必須で”暑熱順化”を獲得しておきたいですね。

暑熱順化の基本メソッド

では、ここからは実践編!実際に暑熱順化の方法についておさらいしていきましょう。

スポーツの種類により諸説あったり、いろいろそれぞれの人のベストな方法がネット上に公開されていますが、ここは基本に立ち返って環境省の熱中症環境保健マニュアルを参考にしました。

やはり国が発行しているマニュアルは文献がしっかり記載されておりますし、安定かなと思ってのチョイスです。

どんなことをする?何時に?

「ややきつい」と感じる運動を、「やや暑い環境」において、毎日 30 分ほど行うことで暑熱順化することが可能です!

「ややきつい」というのは、具体的には「息がハッハッと軽く上がるくらい」で、数値でいうと最大酸素量50~60%ほどです。

人にとって一概に運動機能が一緒ではないため、自分の感覚で行っていただくのがベストですね。

そして、「やや暑い環境」は、つまり、あえて暑い時間帯に走ったりなどのことを指します。

夏は、どうしても涼しいので、早朝や日が落ちてから外へでて、運動しがち。

でも、ここをあえて、陽の高い時間にやってみましょう。

ややきつい運動が少し早歩きの散歩なら、それで構いません。ランニングでも、なんでもいいのです。

もちろん、サイクリストなら適度な速さで漕ぎだしもあり。

ひとまず、30分だけは外の暑い時間帯で運動することを継続してみましょう。

期間は?いつ暑熱順化するの?

こんな真夏に30 分も自転車こいでられっか!ジムで涼しくトレーニングするんじゃ!

まあまあ、いつ暑熱順化を獲得できるか、その期間だけでもお聞きになってください。

環境省によると、暑熱順化は運動開始数日後から始まり、なんと2週間程度で完成すると報告されています。

そうです、たった 30 分間を、たった 14 日間がんばるだけで、真夏でも最高のパフォーマンスで成績が残せる身体づくりが完成するのです!

しかも運動強度は「ややきつい」でオッケー。

こんなお得(?)なことはありません。

最初すこしきつければ、暑い時間帯にあえてスーパーまで歩く、などから始めてもいいんだそう。

とりあえず、暑さを避け続けていては、いつまでも暑熱順化できずに、パフォーマンスが下がることになるということですね。

最後に、適切なリカバリーを!

もちろん、「ややきつい」といっても、温熱環境下で行えば、身体は熱ストレスに曝され、体力は失われます。

暑熱順化中に熱中症で倒れたら、本末転倒もいいところですね。

そのため、暑熱順化を獲得するメソッドの最も大切な部分は、適切なリカバリーを行うことです。

適切な水分補給(電解質を含む)はもちろん、基本の十分な睡眠、場合によっては運動後の冷却をしっかり行いましょう。

適切なリカバリーを行うことで、身体へ蓄積される熱ストレスの軽減を目指すことができます。

暑さに慣れることに重きを置きすぎて、就寝中の冷房はオフにしている、なんてことはありませんよね。

快適に眠れる室温の限界は28℃と言われていますので、十分な睡眠をとるためには現代の文明の利器が必須のようです。

そこはしっかり冷房を使って十分な睡眠時間を確保しましょう。

そしてもちろん水分補給も忘れずに。

まとめ

暑熱順化は、ランニング、サイクリストなど、室外競技のトレーニングには必須のスキルです。

熱中症などのリスクを軽減し、高温環境下での運動パフォーマンスを向上させるために重要な要素となります。

試合前などに、暑熱順化のメカニズムや注意点を理解し、安全で効果的なトレーニングを行うように心掛けましょう。

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